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Frontline / 2020.02.29

“所有からの解放”を最速で実現する。OYOのマーケティング戦略に迫る

Engagemateのマーケターインタビュー企画。
今回の企業は“旅するように暮らす”というビジョンを現実のものとするべく挑戦する、インド発のスタートアップ、OYO。合弁会社設立の発表からわずか1ヶ月でサービスをスタート。1,000件の物件獲得やその集客をたった3ヶ月で獲得するなど、超スピードで成長を続ける同社のマーケティング戦略とそれを生み出すための企業カルチャー、そして今後の事業展望について、OYO LIFEのレベニューヘッド、山口公大氏にお話をお伺いしました。

PROFILE

  • 山口 公大

    山口 公大

    Kota Yamaguchi>

    OYO LIFE:Revenue Head【レベニューヘッド】

    1988年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、2010年にDeNAに新卒入社。様々な事業立ち上げを行う。2015年から米ITユニコーン企業Sprinklrの日本法人創業に参画し、Directorとして事業を牽引。2018年に個人でクラフトビール事業を立ち上げ、クラウドファンディングを行い、makuakeビールカテゴリ史上最高額の支援を集める。その後TRYPEAKS株式会社を創業し、代表取締役に就任。並行して2018年から、OYOの日本法人創業に参画し、マーケティング・PR・レベニューマネジメント・新規事業の責任者としてOYO LIFEブランドの立ち上げ、事業推進を行う。

目次

テクノロジーで空間の価値を上げる。インド発のスタートアップ、OYOとは

まずはじめに、OYOについて教えてください。

OYOはインド発のホテルベンチャーの会社です。創業からまだ6年ですが、世界10カ国、500以上の都市でホテル・住宅事業を展開しています。

インドでは稼働率が低い低価格帯、中価格帯のホテルをAIテクノロジーを活用して運営し、そのホテルの稼働率を圧倒的に向上させています。中国でも同じような事業を展開していて、たった1年でインドに追いつくくらいの勢いがあります。

日本で事業を展開する際は、「ホテル事業をやれ」「日本にOYOを持ってくる」という指示はなく、「OYOっぽい会社を日本に作れ」とだけ言われました。

そうした背景もあり、ホテルだけではなく、民泊やマンスリーマンション、賃貸、シェアハウスなどで幅広く実験をした結果、不動産領域で日本の事業をスタートさせることになりました。

「OYOっぽい」とはどのような特徴を指しているのでしょうか。

OYOという会社は、一言で言うと「空間の価値を上げる会社」です。空間にテクノロジーを用いて、業界をディスラプションしています。

また、若いメンバーで思いっきりやることもOYOの持つ特徴の一つで、CEOのリテシュ・アガルワルはまだ25歳です。

先日サービスをスタートさせた「OYO LIFE」について教えてください。

OYO LIFEは物件探し〜入居まで、スマホからワンストップで行える不動産サービスです。入居の際の敷金礼金、家具やWi-Fiなどのあらゆる初期コストが不要で、新しいライフスタイルの形を創ることを目指しています。

なぜ不動産領域の事業からスタートしたのでしょうか。

ホテルや民泊領域の事業も検討していたのですが、市場が圧倒的に大きかったので、不動産領域から始めることにしました。ホテル市場は2兆円市場である一方、不動産市場は12兆円もの規模があります。

また、不動産領域は手間も無駄がまだまだ多いトラディショナルな業界で、テクノロジーによって改善できる余地が多くあると考え、今の事業モデルを構築しました。

3つのステップで「旅するように暮らす」を実感してもらう

OYO LIFEではどのようなビジョンを掲げているのでしょうか。

「旅するように暮らす」というライフスタイルを提唱しています。我々は物件を売っているのではなく、ライフスタイルこそが商品だと考えています。

「旅するように暮らす」というライフスタイルは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

単純に住む環境に楽しさを感じるのではなく、「所有からの解放」によって季節や気分に合わせて気軽に「住み替えること」「様々なサービスに出会っていくこと」に楽しさを感じるようなライフスタイルです。

そうした体験は、従来の賃貸による「住まい」とはまったく別のものなのですが、まだ「他の賃貸相場と比較して」という視点でサービスを比較されてしまいがち。その認識をどう変えていくかが、現状の課題です。

「所有からの解放」という価値観を広めるために、どのようなマーケティング戦略を描いているのでしょうか。

OYOでは大きく3つのステップで考えています。

まずは「強制的に一回その世界を体験してもらう」です。1ヶ月間無料で住める権利が獲得できる「#いきなり東京0円ライフ」キャンペーンはそれにあたります。引越しはライトなものではないので、その障壁を消して、まずは無理矢理にでも、その世界を体験していただきます。

2つ目は「住む以上に体験価値を上げる」です。第一弾として、「OYO PASSPORT」によって、入会した人たちが色々なシェアリングサービスに出会い、「所有しない」というライフスタイルを知ってもらうことで、そのメリットを実感していただきます。

「OYO PASSPORT」とは、OYOの物件に住んだ人は最初の一か月、パートナー企業のサービスを無料で使うことができるというサービスです。家具シェアリングのCLAS、カーシェアリングのAnycaや家事代行のベアーズなど、30社ほど※の便利なサービスが使い放題になります。

※2019年4月現在

そして最後のステップです。これは今後取り組んでいくのですが、「一度OYOを利用した人が次の物件に移動する」というイベントを仕込んでいます。「別の物件のほうが魅力的だからそっちに引っ越そう」というように、まるで服を選ぶかのように住まいも気軽に選んでもらえるようになればと考えています。

このステップによって、「所有しない」というライフスタイルと従来のライフスタイルを実体験に基づいて相対比較してもらいます。そこで、「所有しない」ライフスタイルがよいと判断されたとき、不動産領域を「ハック」できると思っています。

プロダクトの前に並んでもらう。急速な成長に合わせたマーケティング戦略とは

急速な勢いで取り扱いの物件が増えていますが、そのスピードにはどのような背景があるのでしょうか。

CGOであるカビ・クルートの勢いが尋常じゃないんです。彼はインドで様々なサービスを立ち上げてきているのですが、その彼の口癖が「納期は今」なんです。「納期はいつなのか」と質問している時点でそれは遅いとよく話しています。その勢いですべてのプロジェクトを走らせており、まるで250キロのアクセルを踏んでいるような状態です。

そのスピード感はマーケティングの施策ではどのように反映されているのでしょうか。

このスピード感に合わせて事業を展開するには、事業進捗に合わせながら柔軟に、かつ普通じゃないことをやらないといけません。すごい勢いで取り扱いの物件が増えているので、普通のスピードで考えていたのでは遅すぎます。

マーケティングでは「プロダクトをマーケティングする」という考え方を辞め、先にマーケティングを行い、プロダクトの前に顧客を並んでもらう、つまり「先にお客様を確保してプロダクトをリリースする」という手法をとっています。

事前登録キャンペーンはまさしくそれです。先にゴールやビジョン、OYOがやりたいことをマニフェストっぽく打ち出し、どれだけ賛同が得られるかテストするようにしていました。

また、これはインド的なPRのやり方なのですが、「カーペットボミング(絨毯爆撃)」という戦略を採用しています。リリース情報を一回にまとめず、「毎日新しい情報が出続けている状態」「五月雨に色々な情報を小出しにしていく」という戦法ですね。

日本のPRは、ニュースインパクトを出すために一発にまとめることが多いのですが。そうではなく、情報を小出しにし、議論を促す。しばらくしてから公式のプレスリリースを出して答え合わせをするようにしています。

部屋が媒体になる

最後にサービスの展望についてお聞かせください。

今後の展開として、尋常じゃないくらい急成長のカーブを描く予定です。これまでは100日で1,000件の物件を増やしてきましたが、これをはるかに超えるスピード感で成長することを考えています。

将来的な目標としては、OYOの強みである、空間を所有していることを生かしていきたいと考えています。OYOの目指す規模になると、この強みはテレビやウェブのように、「媒体」になると思っているからです。しかも部屋という「媒体」は接触回数が非常に多く、そこから様々なビジネスを展開することが考えられます。

もちろん、一番はユーザ体験なので、気持ち悪さがなく、ユーザ便益が出るものからは絶対ブラさないように、事業開発をしていきます。まずは直近はこの世界観をOYO PASSPORTで実現していく予定です。

【執筆】大木一真 【編集・撮影】Engagemate編集部

(※本記事は2019年5月8日に公開されたGrowth Hack Journalの記事を転載したものです。)

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