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Interview / 2020.07.08

これからは「目的と手段の分化」が進む。より本質が求められる世界でマーケターが行うべきことは? LIFULL菅野氏に聞く

パンデミックによる混乱が冷めやらないなかで、これまでとは違う新しい日常「ニューノーマル」が訪れつつあります。企業もこうした消費者の変化に対応したマーケティングを実施していかなければなりません。

それでは、マーケターはどのように変化に対応していくべきなのでしょうか。また、何を意識しなければいけないのでしょうか。この疑問にお答えすべく、今回はLIFULLの菅野氏をお招きし、「マーケターはどのように行動すべきなのか?」をテーマにお話を伺いました。

PROFILE

  • 菅野 勇太

    菅野 勇太

    Yuta Sugano>

    株式会社LIFULL LIFULL HOME'S事業本部/CX戦略部オムニチャネルマーケティングユニット長

    2008年に株式会社ネクスト(現株式会社LIFULL)入社。以来『LIFULL HOME'S』のBtoCマーケティングに従事。2012年に日本国内初の事例となるマーケティングオートメーション導入を主導。2016年にはYahoo!APIを直接連携したオンライン広告の全社インハウス化を実施。現在はリアル店舗『住まいの窓口』を中心としたオムニチャネル戦略およびCRM戦略を統括。宅地建物取引士。百様株式会社 ファウンダー。

  • 中澤 伸也

    中澤 伸也

    Shinya Nakazawa>

    Repro株式会社 CMO

    家電量販店のソフマップにて、店頭接客、バイヤー業務、ECサイト立ち上げ、データマイニング、店舗開発、経営管理と、様々な職種に従事。ゴルフダイジェストオンライン(GDO)のマーケティング責任者、エクスペリアンジャパンの執行役員CMO、株式会社IDOMのデジタルマーケティング責任者を経て2020年4月に取締役CMOとしてReproに参画。

目次

オンラインへの投資が集客の追い風に

中澤:本日はよろしくお願いします! まず最初にお伺いしたいのですが、不動産業界において、マーケティング面ではどのような変化が発生しているのでしょうか?

菅野氏(以下、菅野):5月は不動産事業者の3割強が、前年比50%以上の売上マイナスの予測をしているものの、すぐに死活問題になるような大きな影響は受けていません。これは理由として、不動産業界は外部要因が他の業界と比べて遅くやってくることに起因していると考えています。

また、自社の話になるのですが、今年のゴールデンウイークは昨年よりも資料請求や問い合わせが増えているセグメントもありました

中澤:なるほど、業績面ではそれほど影響を受けていないことに加えて、問い合わせが増えているのは意外でした。ちなみに、伸びているのはやはりオンライン市場なのでしょうか?

菅野:そうですね、やはりオンライン上での資料請求はもちろん、オンライン内見やオンライン重説も利用者が増えています。

他にも、直近で売買関連のウェビナーも実施したのですが、予想を2.5倍ほど上回る集客でした。オンラインでの情報収集需要は高まっているというのが肌感です。

中澤:現状において、マーケティング施策を変化させている部分などはありますか?

菅野:施策を変えているというよりも、これまで投資してきたオンライン施策がようやく伸び始めたという感覚です。

今回のパンデミックの影響を受けて、住まいに関して考える時間が増えた一方で、店舗は閉まっていることからオンラインを活用しているのだと考えられます。
なので、これまで流入していなかった層が相談に来ているイメージが強いですね。

ライト層の流入に対して、最適な対応方法を模索する

中澤:新しいユーザー層に流入してもらえることは大きいですね。ただ、これまでと同じ対応をするだけでは難しいなとも感じるのですが、この点はいかがでしょうか?

菅野:その通りだと思います。ライトな情報収集層のユーザーが増えたことで、これまでと同じように全員に個別対応をしてしまうと、効率性やコストバランスがどうしても悪くなってしまいます
効率性という観点は、新しく出てきた課題ですね。

中澤:たしかに、ライト層が増える感覚はありますね。効率性への対策はどうしているんですか?

菅野:LIFULL HOME’Sの事業でも、不動産事業者による実業面でも、チャットボットを活用するなどの工数削減を目的とした施策を実施していくことが大事だと考えています。

また、ウェビナーも代替策として動画コンテンツに置き換えるなど工夫をしていくことで、リソースの削減とユーザーの期待を裏切らないバランスをとることがマーケターとして求められているなと感じています。

中澤:ユーザーの期待に応えることを前提として、どのように効率性を上げるのかは、企業として今後求められそうですね。

ちなみに、オンラインを活用するユーザーは、元々リアル店舗などオフラインを活用していたのか、それともオンラインコンテンツをきっかけに新しく流入してきたユーザーのどちらが多いのでしょうか?

菅野:どっちのパターンもありますが、もともとオンラインコンテンツをスルーしていた人たちの行動パターンが変わることで、気づいてもらえるようになったと考えています。今はオンラインコンテンツに対してユーザーのアンテナが敏感になっていると思いますね。

プロモーションの訴求軸を変え、第三者の推奨を増やす

中澤:消費者からのニーズが高まっていると思いますが、新規獲得に向けたプロモーション施策も変わっているのではないでしょうか?

菅野:はい、リアル店舗である「LIFULL HOME’S住まいの窓口」の例でいうと、店舗集客にかけていた予算は、ほぼ全て今はオンライン広告に割り当てていますね。これは3月くらいから予算配分を変えて、プロモーションを実施しています。

中澤:かなり大胆に判断されたんですね。ちなみに、全体のマーケティング費用の割り当ても組み替えられたのでしょうか?

菅野:費用の配分は今のところはそこまで変えていません。ただ、今後は間違いなく市場も変わっていくことが想定されるので、将来的にはマーケティング戦略も変わる可能性が高いです。実際に、最近だとマーケティングの訴求軸を変えたりもしています。

中澤:具体的には、どのような訴求軸で施策を進められているのでしょうか?

菅野:力を入れているのは、第三者の推奨です。今はここにマーケティングコストをかけていますね。

中澤:第三者の推奨ですか。これまでの施策の方が利益は高くなりそうなイメージもありますが、なぜそこに着目したんでしょうか?

菅野:新規で流入しているユーザー層において、サービスを選ぶ基準が変化しているという仮説があるからです。

ブランドの倫理観がマーケティングの在り方としてユーザーから問われている時代になりつつあるという発想から、訴求軸を変更してマーケティング活動を実施しています。

ユーザーの行動変化にあわせて、KPIを変化させる

中澤:ブランドの倫理観がユーザーの選択基準に加味されるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか?

菅野:パンデミックによってユーザーの安全性が脅かされているからこそ、ベネフィットよりも企業の信頼比重が高まっているのではないかと考えています。

なので、今後はサービスとしてのアイデンティティが問われる時代になるのではないでしょうか。

中澤:当たり前のことですが、企業として倫理観のない手法をとるのは問題ですよね。

菅野:利益や売上も大切ですが、目先のことだけに偏重するのはダメですよね。短期的には成果に繋がりますが、ユーザーの離反も増えますし。なので、離反を増やさないことに比重を置いています。

特に、これからチャレンジするのが、具体的なKPIの変更です。まさに直近で取り組んでいるのですが、顧客満足度を重要指標として設定し、そこから売上を見ていく形に変えていくことを検討しています。

中澤:KPIを顧客満足度に変えるのは凄いですね。なかなか出来ない決断だと思います。

来るべき「ニューノーマル」にどのように対応していくか?

中澤:今後のマーケットに関する展望についてお伺いしたいのですが、今後の不動産領域はどのように変化していくのでしょうか?

菅野:先ほどもお伝えしましたが、不動産領域への影響は遅れてやってきますし、オリンピック延期の影響もあるので、予測するのは難しいのが実情です。

ただ、言えることは、ビフォーコロナの状態には戻らずに新しい日常がやってくると考えています。その中で一つ確信しているのが、プレッパー層が増えるということです。

中澤:プレッパーという言葉は初めて聞きました。どういう意味でしょう?

菅野:いわゆる、備える人たちのことを指していて、食料を備蓄することで危機に備える行動をとるような人たちのことを示しています。不安が続く世の中において備える人たちは増えますし、これが不可逆な変化だと思います。

そして、プレッパー層の増加を考慮すると、私たちが行うべき情報提供も変わります。要は、ユーザーが備蓄したいと思う情報を提供しなければいけないということです。

中澤:危機に備えるのは人間としては普遍的な行動ですよね。ちなみに、そういったコンテンツの質や成果については、どのように評価されるのでしょうか?

菅野:認知のきっかけの変化を追うことで、コンテンツが寄与しているのかをまずは判断する予定です。ただ、この判断は難しいなと感じています。例えば、動画コンテンツを設置して、視聴した1年後にサービスを利用しましたということも発生してくることが想定されます。

なので、どれくらいの期間を測定するかなどの評価設計は大切ですし、顧客管理に近い領域が重要性を増しそうです。

中澤:企業のアイデンティティに関わるような施策は、費用対効果を見るのは難しいなと感じます。

むしろ、評価のしようがない部分でもあるなと感じていて、やり続けることに意義がありますよね。やり続けた結果として、顧客満足度が上がるということもあると思います。

菅野:私もそう感じます。さらに、PDCAをどう回していくかが課題にもなりそうですね。

ニューノーマルな世界では、「手段」と「目的」が分離される

中澤:今後やってくるニューノーマルに備えて、マーケターはどのように行動していくべきなのでしょうか?

菅野:住まいもそうですが、今後は各個人が自分らしさを追求する世界になっていきます。なので、十人十色の価値観のそれぞれの実現を支援する企業が選ばれ、生き残り続けます。
この変化を見逃さずに、対応し続けることが求められますよね。

中澤:今回のパンデミックで変化が加速してたことから、本質が重視されることで、良い意味で周囲の目を気にしなくなったのは感じますね。

菅野「手段」と「目的」が分離された世界に変化していくのだと思います。そのような世界では、企業が自分たちの提供価値に立ち戻ることが求められ、提供価値の中でコアな要素が何かを問い直すことが求められます。

潜在ニーズへの投資と「オンラインのリアル化」が鍵となる

中澤:他にマーケターが意識しなければいけないことはありますか?

菅野:他には、将来的に顧客が求めそうな潜在ニーズに対して投資をしておくことは大事だと思います。

今回のパンデミックでは、これまでにオンライン内見やオンライン相談にちゃんと投資をしていたことが功を奏しましたが、今の顧客ニーズだけに着目していては実現出来なかったことです。

中澤:この投資が出来るかどうかは企業にとって大きな分水嶺になりそうですね。それに、オンラインに投資する場合にはオフラインとのギャップをなくすことが求められるのではと感じます。

菅野:そうですね、オンラインをリアルに近づけていくことが必要だと私も感じます。だから、チャット接客やライブコマースなどが具体的な施策として注目されているのではないでしょうか。

中澤:これまでリアルの営業で伝えていた情報が抜け落ちないコンテンツ化はキーワードになりそうだと感じます。菅野さん、本日はお忙しいところありがとうございました!

Author Profile

  • hoozm

    大学時代に公共選択学会に提出した学術論文が最終優秀賞を受賞した経験からライティング活動を開始。大学卒業後はベンチャー企業数社にて、セールス、マーケティングコンサル、メディア立ち上げ、新規事業開発、採用業務などに携わる。現在は、Repro株式会社でマーケティング業務に従事しながら、個人でも寄稿やマーケティング支援を実施。趣味で運営している個人ブログでは「マーケティング アイドル」の検索1位を数年間キープ。カスタマーマーケティングmeetup主催。

    Twitter: @hoozm1

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