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Know-how / 2020.02.18

経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは?概要、取るべき対策を紹介

IT業界を中心に「2025年の崖」が注目を集めていることをご存知でしょうか?

これからの時代に必要となる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進度合いによって、日本経済はこの崖を滑り落ちてしまう可能性があります。この記事では、経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」について解説するとともに、企業がとるべき対策を紹介します。

目次

日本に訪れる危機「2025年の崖」とは

「2025年の崖」とは、経済産業省の「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で指摘された事象です。2018年に提示された同レポートは、国内企業がDX推進の必要性を理解し、DXを推進しようとするものの、実際にはビジネス変革につながっていない現状を示唆しています。

参考:経済産業省 「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

複雑化・老朽化、さらにブラックボックス化した既存の基幹システムが残存するなかで、スピード感をもってDXに取り組まなければ、国内企業は市場競争の敗者になる可能性をデータから示しています。具体的には、DXが進まなければ、2025年以降最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとし、このことを「2025年の崖」といいます。なお「12兆円の経済損失」は、レポートが発表された2018年当時の経済損失の約3倍の規模であり、既存の基幹システム維持にかかるコストとして試算された額です。

そして、2025年までの間にDXを実現することで、「2030年実質GDP130兆円超の押し上げ」を実現する旨が、DX実現シナリオに掲載されています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

「DX」は「DigitalTransformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略であり、デジタルテクノロジーを活用して、経営や働き方などビジネスプロセスを「再構築する」ことを表します。単に既存のシステムに、AI技術やクラウドサービスを用いることとは異なります。

DXは既存ビジネスの「創造的破壊」、つまりディスラプションを含む、「デジタル技術による人々の生活の変革」なのです。

DXは人々の生活、消費者の購買行動に深く関わってきます。例えば、宿泊という営業行為を行えるのは、都道府県知事の認可を得たホテル・旅館に限られていました。そのような既存の枠組みに対しディスラプションを行ったのが北米生まれの「民泊ビジネス」です。自宅の空室を有効活用したい、ビジネスとして他人を宿泊させたい「民泊オーナー」の動きが消費者に受け入れられ、今では増え続ける訪日外国人観光客の宿泊先として期待されるようになりました。このため、既存のホテル・旅館業界は、民泊の流れを追従せざるを得ず、さらにディスラプションで再構築された新たなビジネスに挑むことになります。

このように、デジタル化の波とともに顧客はさまざまな形で企業と接点を持つようになりました。企業は、一貫したビジネス・サービス体験を求められるようになっています。

企業がビジネスで差別化を図り、市場競争で生き残るには、「特別な顧客体験」を提供する必要があります。ビジネスにおけるDXは、新たなテクノロジーを取り入れて組織を変革していくことであり、新たな価値を創造することを意味します。市場競争で優位に立つためにも、DX推進の戦略を立て実行することは必須事項です。

2025年に何が起きるのか?

レポートの中で危惧されている、2025年までに表面化する問題を列挙します。

・市場の変化に対してビジネスモデルを柔軟に変更できず、デジタル競争に負ける

・増大するデータを活用できなくなり、市場競争で敗者になる

・先端技術を有するIT人材が供給不足に陥る

・古いプログラミング技術を保有する人材が枯渇する

・従来型ITサービス市場とデジタル市場のスケールが、9:1から6:4に変わる

・保守・運用を担う人材がおらず、システムトラブルやデータ流失・損失のリスクが高まる

2020年、日本国内で5Gの商用利用がスタートしました。高速・大容量・多接続通信が可能になることで、今後さらなるデジタル市場の拡大、取扱データ量の爆発的な増加が見込まれます。上述の問題を解決しなければ、企業成長の機会を失うなど2025年の崖に落ちてしまいます。

もうひとつ、2025年の2年後の2027年に起きる大きな変化が、基幹業務システム「SAP ERP」の保守サポート終了です。

SAP ERPは1992年に発表された基幹システムですが、現在までにさまざまなバージョンアップが行われ、その結果システムが複雑化・肥大化してしまっています。2015年に後継となるソフトウェアが発売されたものの、肥大化したSAP ERPからの移行は容易ではなく、多くの企業が今もなお使い続けています。

そんな中、SAP社はこのSAP ERPのサポートを2027年に終了します。現役で稼働しているとはいえ、企業によってはブラックボックス化する恐れのあるレガシーシステムの一つとなっているため、この整理や移行に向けた対処が必要となります。

日本と海外とのDXに関する意識の差

IT、および通信分野に関する調査・分析を行うIDCが、世界1,987社を対象に実施した意識調査があります。この調査からは日本と海外とで、DXに関する意識の差が明らかです。DX推進に期待する項目を比較すると、国内企業は「データの資本化・収益化、コスト削減」である一方、海外企業は「製品開発、顧客体験の向上」となっています。

また、2015年から2020年におけるIT産業の成長率は、海外の5.0%に比べ日本は1.1%に留まっています。低コストでデータを活用したビジネスを行おうとする日本企業と、DXにより幅広い意義を持たせている海外企業という違いが、IT産業の成長率にも影響を与えていると考えられます。

参考:IDC 2019年 国内企業のデジタルトランスフォーメーション動向調査
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=JPJ44112319

DXを阻害する要因

2025年の崖を超えるには、DX推進が必要です。事前に対策をたてるために、DXを阻害する要因を整理しましょう。前提として、2025年の崖が生まれた背景に、「レガシーシステム」の存在があります。

レガシーシステムは、「老朽化、複雑化、そしてブラックボックス化」している基幹システムです。DXレポートによると、2025年の時点で21年以上稼働しているレガシーシステムは、全体の6割を占めると予測されます。そして、同システム刷新の波に乗り遅れれば、企業は多くの事業機会の損失に見舞われ、最大で年12兆円の経済損失が生じます。

さて、DXを阻害する具体的な要因には、このレガシーシステムが活用され続けること、IT人材不足、技術不足が挙げられます。各問題の背景を整理します。

・レガシーシステムの継続利用

既存の基幹システムがブラックボックス状態でも、日常的に使えていれば「レガシー」と認識しにくいものです。しかし、国内企業のIT関連費用の80%が現行ビジネスの維持・運営に費やされています。背景には、企業内で部門ごとに部分最適を目指した結果、システム全体が肥大化、複雑化、ブラックボックス化した経緯があります。これまでの技術的負債が解消されず、運用・保守コストが高騰していくなかで、新しいデジタル技術に予算や人材を投入するのは困難です。

・母数としてのIT人材不足

そもそも、国内のIT人材不足が深刻です。大規模システム開発を手掛けてきた人材が定年退職を迎えたのち、2015年の時点でIT人材不足は約17万人を数えました。将来的に、2025年には43万人近いIT人材不足に陥ると予測されています。DX推進を担う先端IT人材自体、供給できなくなるのです。

・対応可能なIT人材不足

大規模システム構築に携わった人材が現場から去ると同時に、属人化されたノウハウも失われます。ブラックボックス化したシステムの中身が分からず、レガシーシステムに対応できなければ、基幹システムのさらなるブラックボックス化が想像できます。なお、運用・保守が行き届かなくなれば、DX推進に支障をきたすほか、サイバーセキュリティの事故、データ流出・損失などのリスクも高まります。

・所属企業によるIT人材・技術の不足

ユーザー企業とベンダー企業からなる多重下請け構造が、IT人材不足・技術不足を招いています。ITエンジニアがユーザー企業に多く所属する諸外国では、ITシステムのノウハウがユーザー企業に蓄積されているので他エンジニアへのノウハウ伝授も容易に行えます。一方、日本国内では、ITエンジニアの多くがベンダー企業に所属しています。ユーザー企業にノウハウが蓄積されず、現場で手を動かす下請け企業ほどノウハウが蓄積されているのです。そのため、増大するデータを活用できないまま、競争力の低下を招くことになります。

・最先端技術を担うIT人材不足

IT人材・ノウハウ・技術を有するベンダー企業も、人材不足に見舞われます。レガシーシステムの運用・保守に人材を投入する分、最先端技術を扱う人材を確保できなくなります。

「2025年の崖」が訪れる前に、行うべき対策とは

DX推進の重要性と、DXを阻む要因が分かりました。2025年を目前に、企業はどのような対策をとればよいでしょうか。

経済産業省は、2025年の崖を乗り越えるための「DX実現シナリオ」を描きました。「2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムに関して廃棄・塩漬けにするものを仕分けするとともに、必要なものについて刷新しながらDXを実現することで、2030年実質GDP130兆円超の押し上げを実現する」というものです。

具体的にユーザー企業が行うべき対策を、2つのタームに分けて示しています。

【~2020年までの先行実施期間】

システム刷新の経営判断が求められます。「DX推進システムガイドライン」を策定し、DX推進の体制構築を進めます。「見える化」指標による診断と仕分けも先行実施期間に行います。そして、次のDXファースト期間を見据え、システム刷新計画を策定します。

【2021年~2025年のDXファースト期間】

システム刷新集中期間です。経営の最優先課題は、経営戦略を踏まえたシステム刷新とし、計画的にシステム刷新を行います。不要な機能を廃棄することもあります。

ユーザー企業が既存の技術的負債を解消することで、新たなデジタル技術の活用に投資できるようになるのです。

経産省の「DX推進指標」をもとに計画を立てる

DX推進にあたり、まずは自社の現状を把握し、計画を立てましょう。活用するのは経済産業省が策定したチェックリスト「DX推進指標(DX評価指標)」です。

「DX推進指標」は大きく2つの構成と35項目で構成されています。

・DX推進のための経営のあり方

・DXを実現するうえで基礎となる、ITシステムの構築

いずれも定性指標で構成され、経営者自ら回答すべき「キークエスチョン」、経営幹部・IT部門・事業部門、そしてDX部門と議論すべき「サブクエスチョン」に分かれています。

項目に回答すると、自社のDXに対する現在位置、つまりDXの成熟度合いを把握することができます。成熟度レベルは6段階で示され、次のレベルに進むアクションを求められます。何から始めるべきかを確認して、DX推進の計画を立てるのです。

現状のITシステムの把握

部門ごとの「部分最適」を目指した結果が、今の肥大化・ブラックボックス化です。ITシステムから周辺環境まで、ITシステムを「見える化」しましょう。システムの稼働状況や運用・保守体制、ハード・ソフトウェアの資産構成、ライセンスの使用状況、業務フローなどを具体的に可視化するのです。

自社の現状を把握すると、ほとんど使用していない機能が見つかるはずです。同時に自社の業務に必要なシステムを洗い出せます。

必要な機能・不要な機能の振り分け

現状のITシステムを把握したら、必要な機能/不要な機能に振り分けましょう。

DXは、既存のシステムから新たなシステムへと、すべてを切り替えるものではありません。ポイントは、現状のシステムを要不要で仕分けし、なおかつ刷新・維持・追加・廃棄の区分を明確にすることです。不要な機能を整理・破棄することで、運用・保守にかけていた費用・人材を、新たなデジタル活用に投入することができます。これにより、サイバーセキュリティの事故や、データ流出・損失などといったリスクの低減も期待できます。

なお、レガシーシステムは部門ごとに構築されたブラックボックス状態のシステムです。そのため、DXを目的とするシステムの刷新では「再レガシー化」に注意するべきです。業務プロセスの見直しとともに、情報共有や連携を想定した共通プラットフォームを構築しましょう。個別に必要な機能は、マイクロサービス化のうえで細分化することが望ましいです。

システムの刷新と業務の改革

システムの刷新と業務の改革は、対で行われます。上述の通り、既存のシステムにとらわれたままで、あるいは従来の業務プロセスに革新的な技術を採り入れても、変化は起こりません。むしろ再レガシー化を招きます。

業務プロセスに改革を起こしながらシステムの刷新を進めましょう。

まとめ

今回は、経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」をメインテーマとし、その概要と企業がとるべき対策を紹介しました。

日本に訪れる危機「2025年の崖」を乗り越えるには、いまだに多くの企業が抱える「レガシーシステム」の刷新が必要です。これは結果として人材・技術を新たなデジタル技術に投入できる状況を生み、DXが内包する「特別な顧客体験の提供」に結びつくためです。

また、経済産業省は、DXレポートとともに「DX推進指標(DX評価指標)」を策定しています。経営層と現場が一体となり、自社のDX成熟度合いを把握することで、事前に対策をとれるようになります。デジタル技術の発展で刻一刻と変化する市場に対応し、競争で優位に立つためにも、DX推進の戦略を立て実行していきましょう。

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