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Know-how / 2020.09.02

「買いそうな顧客」をAIで分析する具体的ロジックと、利用上の注意点

本記事は、Repro内でAIに特化した機能開発・実証実験を行う「Repro AI Labs」チームによる寄稿です。
このたびRepro AI Labsチームはハンドメイドマーケット「minne」と共同で、将来的に購入しそうな顧客を予測する実証実験を行い、実際に売上向上に寄与する実験結果を得ることができました。

ユーザーの購買意欲を把握し、それに合わせたオファーを送ることができれば、カスタマーエンゲージメントの向上に貢献しうるはずです。
この実験について、具体的な分析手法の一部をマーケター向けに解説する記事となっています。

目次

前提

以下のような前提での分析を行うと想定します。

・EC サービスを運営中
・過去の分析の結果、ユーザーは平均して1月に一度購入することが分かっている
・顧客のデータを分析して、近い将来に購入しそうな顧客 を見つけたい
※本条件はminneとは無関係の、仮想的なECの前提条件です

この条件で、AIを使わずに検討する方法と、AIを使った場合のアプローチロジックを考えます。

一般的なアプローチ: RFM分析

まず、AIを使わずに、近い将来に購入しそうなユーザーを分析する手法を考えます。一般的に用いられるのは、「RFM分析」のうち「Recency(購入日の近さ)」と「Freaqency(購入頻度)」をかけ合わせた指標ではないでしょうか。

ランクRecency (最新購入日からの経過日数)Freaqency(特定期間中の購入回数)
11週間以内20回以上
22週間以内15回以上
31ヶ月以内10回以上
42ヶ月以内5回以上
5それ以上前5回未満

このようなランクをつけて、「Recencyが高くFreaqencyも高い顧客」は優良顧客であり、近い将来にも購入する可能性が高い、と判断することができます。

このとき、たとえば「Freaqencyの平均では2週間に1回くらいの購入を行うユーザーだが、Recencyは1ヶ月以内である」という顧客を想定すると、このユーザーはもうそろそろ買ってもおかしくない、ということが言えます。

しかしながら、このユーザーのRecencyはランクで言えば3にあたるため、すごくロイヤリティが高いユーザーであるかと言えばそうではない、という判断になってしまいます。

RFM分析はざっくりとロイヤリティの高い顧客を抽出するには向いていますが、このように「もうすぐ買いそうなユーザー」を抽出しようとすると、場合分けが複雑となり、運用しづらくなってしまいます。

そこで、AIに学習してもらうことにより、かんたんに将来の購入予測が立てられないかを考えてみます。以下でそのロジックを検討します。

購買日情報を元に、AIで将来の購入予測に役立てる

ここではまず過去1ヶ月間での購買行動をベースに、購入予測ができないかを検討します。

1. 前日に購入しているユーザー

前日に購入しているユーザーが 2 日連続で購入する確率は高いでしょうか? 事前の分析で、全ユーザー平均の購入間隔は1ヶ月であることが分かっているため、2日連続で何かを購入する確率はあまり高くなさそうです。

2. 3週間前に購入したユーザー

3週間前に購入しているユーザーはどうでしょうか?こちらも平均購入間隔が1ヶ月であることを踏まえると、近いうちに何かを購入する確率はそこそこ高くなるかもしれません。

3. 4週間前と2週間前に購入したユーザー

ここまでは直前の購入のみに着目していましたが、2回前までの購入を見ることでより精緻な予測ができないか考えてみます。

例えば、4週間前と2週間前にそれぞれ1回購入しているユーザーがいた場合、そのユーザーには2週間毎に購入するような習慣があるかもしれません。

AI による予測

このようなイメージで、過去1ヶ月間の購入日を元に購入確率の高さを検討します。

1週間単位の購買有無を元に購入確率の場合分けをすると、以下のようになります。

過去1ヶ月間の購入日をもとにした購入確率の場合分け

1週間単位で分けただけでも、このような複雑な場合分けが発生します。これを人の手で行うのは非常に厄介ですし、さらに1週間単位でなくもっと細分化した分析もできるはずです。

以下のようなデータをAIに投入することで、ユーザーの行動データの特徴を学習して、購入確率を予測できます。

ID30 日前の購入回数29 日前の購入回数1日前の購入回数当日の購入回数
xxxxxx1001
yyyyyy0110
zzzzzz0000

ここまで見てきて、「過去1ヶ月間の購入情報」だけでは、1ヶ月以上前に購入したユーザーの購入確率を検討することができないではないか、と思われるかも知れません。

実際、通常のRFM分析では過去の長期間にわたってデータを取得し、それをランク分けして掛け合わせるというアクションを行います。

今回のminneとの実証実験では購買データだけでなく、アプリ起動やコンテンツ閲覧など、Reproで取得している行動データを掛け合わせて予測を行いました。これにより、過去1ヶ月程度の情報のみで十分な精度で予測を実現し、成果を上げることができました。

短い期間のデータでもAIによる購入予測ができるというのは、マーケターにとっては扱いやすいツールとなるのではないでしょうか。

AI による予測結果の使い方

ここまでで、AI を用いると人手では不可能な細かな分類を考慮することが期待できることを見てきました (回りくどい言い方をしていますが、意図的です)。一方、AI による予測結果を盲目的に利用することはおすすめできません。

利用する際には次のような事項について考慮するのが望ましいでしょう。

ブラックボックスになりがち

人手で RFM 分析を行った場合と異なり、AI での予測結果はブラックボックスになりがちです。特に、施策を出し分けるための分析結果について単純には見ることができないため、ビジネス上意味のある振る舞いをしてくれるとは限りません。

AI の出力する結果を盲目的に信じるのではなく、例えば RFM 分析で得た知見と照らし合わせるなどして、妥当な振る舞いをしているか確認することが必要でしょう。実際に購買予測の実証実験を行った際にも、過去データを用いて精度の確認や上位・中位群の割合が急激に変化しないかの確認を行っています。

極端な結果を出しがち

現在の AI では常識を考慮することが単純にはできないため、その予測結果は極端なものに偏る場合があります。例えば、学習に用いたデータ中に購入に至っているものがほとんどない場合、AI はすべての場合について「購入しない」という予測結果を返しがちになります。

AI がこのような極端な挙動を示さないか、少しずつ使ってみて結果を確認しながら範囲を広げていくと良いでしょう。こちらも実際に実証実験を行った際には、何度か実験を繰り返し、範囲を広げながら動作を確認しています。

minneの実証実験について

最後に、minneで行った実証実験の結果について、かんたんにご紹介します。

ここまで見てきたような購入データの処理と、Reproで取得している行動データの掛け合わせにより、minneではユーザーごとの「購買確率」を高・中・低の3つに分類しました。

このユーザー群ごとの行動を観察すると、実際の購買確率に対して明確な差異が生まれました。

購買確率「低」のグループの購買率を1としたときに、購買確率「高」のグループでは、約24倍もの確率で、実際に商品が購入されました。

その上で、各ユーザーに「2000円以上の購入で300円を割引」というクーポン施策を行いました。

その結果、

購買確率「高」のユーザー群では購買行動が上昇
購買確率「中」のユーザー群では購買金額が上昇
購買確率「低」のユーザー群では行動に変化なし

という結果が得られました。

これは、購買確率ごとにクーポン施策を変更することにより、より効率的な販売促進ができることを示唆しています。

詳しくはこちらのプレスリリースをご覧ください。

終わりに

Repro AI Labs ではマーケティング分野への AI への活用を実現するために活動しています。今後も実証実験の結果やその解説について、マーケターの皆様に還元できれば幸いです。

Know-how

Author Profile

  • 杉山 阿聖Sugiyama Asei

    Software Engineer

    2019 年に Repro 株式会社に入社し、以来 Repro AI Labs で AI をマーケティング分野に適用するために、実証実験や基盤開発を実施中。プライベートでは TensorFlow のコミュニティに参加中。著書に機械学習図鑑(共著)。

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