
Overseas / 2020.05.01
コロナ禍から回復途上にある中国から学ぶ。企業が生き残る鍵は「エンゲージメント」にあり
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顧客分析のなかでも特に有名な手法の一つである「RFM分析」。実際にこの手法をマーケティングに利用している企業も多いでしょう。
しかしその分析結果を、果たして有効に使えているでしょうか。
ただ分析して、何となくいくつかのメールを送り分けるだけで終わってはいないでしょうか。
今回取り上げるのは、アメリカ発のECサイト分析ツールを展開するPutler社のブログから、「RFM分析」の非常に詳細な方法論がまとめられた記事です。
分析する手法の紹介だけではなく、分析結果を用いて顧客を「11分割」するセグメント化の方法や、セグメント化したあとに具体的にどのようなマーケティングアプローチを取れば有効なのかという部分まで詳述されています。
「分析して終わり」のマーケティングに陥りがちなマーケターの方は、ぜひ以下を読んで、分析を施策につなげてみてはいかがですか?
「RFM」とは、Recency(最新購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累計購入金額)の頭文字をとったもの。行動ベースで顧客をセグメント化する手法の一つです。
「直近でいつ買い物をしたのか?」、「どれくらいの頻度で買い物をするのか?」、「通算でどれくらいの金額の商品を購入したのか?」の3軸で購買データを分析し、顧客をグループ分けしていきます。
そもそも、一つの軸だけでは評価として不十分だという前提を押さえておきましょう。ビジネスにおいては、ただ累計購入金額が多い顧客たちを「優良顧客」とみなしがちです。しかし、彼らは一度だけしかサービスを利用していないのかもしれないし、ものすごく前に利用してそれきりになっている人々かもしれません。単なる売上額だけではなく、LTV(顧客生涯価値)を念頭において顧客を評価しないと意味がないのです。
RFM分析では、Recency(最新購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累計購入金額)という3つの評価軸を用い、それらを総合して顧客をグループ分けしていきます。お勧めしたいのは、以下の11種類のセグメントに分け、それぞれに最適な施策を実行することです。
1. Champion(最近サービスを利用し、購入頻度も購入金額も高い顧客)
クーポン進呈など、何らかの形で「お礼」をする。また、新サービスの提供開始時にはまず最初に彼らに共有することで、拡散を狙う。
2. Loyal Customers(頻繁にサービスを利用し、プロモーションを実施すると何かアクションをとってくれる顧客)
より高ランクのサービスへのアップセルを狙う。レビュー依頼をする。
3. Potential Loyalist(直近でサービスを利用していて、購入頻度も購入金額も高い顧客)
会員制サービスへの誘導や、他サービスへの導線設置を行う。
4. Recent Customers(直近でサービスを利用しているが、頻度が高くない顧客)
オンボーディングのサポートを実施したり、良い顧客体験を早急に与えることを考える。
5. Promising(直近でサービスを利用しているが、購入金額が高くない顧客)
サービス内容の認知を高めるべく、無料トライアル期間を提供したりする。
6. Customers Needing Attention(最新購入日、購入頻度、累計購入金額の全てが平均以上だが、最近はそれほどサービスを利用していない顧客)
期間限定イベントの実施や、過去の購入商品に基づいたレコメンドを行うなど、アクティブ化を試みる。
7. About To Sleep(最新購入日、購入頻度、累計購入金額の全てが平均以下で、離脱のリスクが高い顧客)
人気の商品やページを提示するなど、サービスとの接点を維持しておく。
8. At Risk(購入金額、購入頻度ともに高いが、最近サービスを利用していない顧客)
パーソナライズされた内容のメールを送信したり、サービスのリニューアル通知を行ったりする。
9. Can’t Lose Them(購入金額、購入頻度ともに高いが、最後に利用してから長い期間が経過した顧客)
サービスのリニューアルを通知したり、接点を持ち続けられるようにメッセージを送る。
10. Hibernating(最近あまりサービスを利用しておらず、購入金額、購入頻度ともに低い顧客)
利用したものとは別のサービスや、スペシャルセールの情報を送るなど、新鮮な価値を訴求する。
11. Lost(最新購入日、購入頻度、累計購入金額の全てが最低ランクの顧客)
キャンペーンを実施して興味を歓喜するか、あるいはそのまま無視する。
このように細かくセグメント化していくことによって、マーケティング活動にかかるコストを抑え、ROIを最大化することが可能になります。
マーケティングの典型的な失敗例は、コンテンツも、デザインも、CTAの配置も洗練された素晴らしい内容のメールマガジンを作ったあとで、それを顧客全員に対して一斉に送信してしまうこと。当然それぞれの顧客にはそれぞれの趣向があるため、一つのメッセージが全員に刺さるということはありません。
だからこそ、オーディエンス全体にリーチすることを考えるよりも、ターゲットを絞ってプロモーションを実行していくべきなのです。
しかし、ターゲットとなる顧客セグメントを設定し、彼らに合ったメッセージを考えることは、そこまで簡単なプロセスではありません。それぞれのサービスで、最適な施策は変わってくるからです。RFM分析が有用なのは、ほとんどのサービスにおいて、「顧客をセグメント化する」プロセスを簡略化できるという点です。
分析手法は他にも色々ありますが、誰がロイヤル顧客なのか、あるいは誰が離脱しそうな顧客なのか、そのマッピングを簡単に行えるメリットは非常に大きいと考えられます。
RFM分析は小手先のテクニックではなく、アカデミックな領域でも理論的に有効とされてきた方法です。
基盤となっているのはいわゆる「パレートの法則」で、ビジネス一般においての「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」という観察に基づいています。売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行うほうが効率的であるという前提から、顧客セグメントの最適化を目指してRFM分析が登場したのです。
次にRFM分析を構成する3つの指標をどのように集計していくかについて述べていきましょう。
まずはじめに、顧客それぞれに対して、
R:最終購入日からの経過日数
F:購入回数
M:合計購買金額
を集計します。
その実数(Value)を基に、今度は5段階の評価(Score)を与えていきます。
例えば以下の図は顧客が合計15人の場合なので、上位3人にそれぞれ「5」のスコアを与え、次の3人には「4」、その下の3人は「3」というように、あくまでも順位に基づいた相対的なスコアを振っていく形で問題ありません。
RFM分析においては、単に購買金額の大きい顧客ではなく、このスコアが高い顧客が優良顧客という扱いになるのです。
5段階評価の付け方は様々な方法がありますが、最も一般的な方法2つを紹介しましょう。
まず一つは、絶対値で評価する方法です。
例えば、「R:最終購入日からの経過日数」の場合は、24時間以内に購入した顧客には「5」、3日以内に購入した顧客には「4」、1ヶ月以内に購入した場合は「3」…といった形でスコアリングしていきます。
各サービスのビジネスモデルに合致した範囲を適宜設定していくことはできますが、その分難易度は高い方法です。
もう一つは統計学における考え方、「五分位数」(Quintile)を用いて、相対的に評価をしていく方法です。
数学における「パーセンタイル」という指標をご存知でしょうか?計測値を小さい数字から大きな数字に並べ変えたときに、どこに位置するのかを%単位で測定するための単位で、ある一つの要素の全体における位置を測定する単位として用いられます。
「五分位数」もほぼ同様の考え方ですが、パーセントで100分割するのではなく、5個に全体を等分した時に、どのグループに位置するのかを表す指標です。
例えばパーセンタイルで18だった場合は0-20の間なので、「五分位数」でいうと1になります。
ビジネスモデルにかかわらず、データさえあれば顧客を簡単にマッピングできる方法であるため、ぜひ推薦したい方法です。
RFM分析を通して、3つの要素に対してそれぞれ5段階評価をすることになるので、数字の組み合わせとしては5×5×5=125通りあります。
そのまま図示すると、X軸、Y軸、Z軸の三次元空間で展開することになりますが、三軸での図示は直感的に把握しずらく、ワークしないことが往々にしてあります。
把握しやすくビジュアル化を行うためには、F(購入回数)とM(合計購買金額)の平均スコアをY軸、R(最終購入日からの経過日数)をX軸にプロットする方法がお勧めです。
これにより組み合わせが125通りから、10×5=50通りまで減少します。
F+MとRの二軸で把握することは実は合理的な発想です。前者二つの要素は結局、「どれだけ多く」顧客が購入しているかを示すものですが、Rはそれとは別軸で、顧客の「エンゲージメントレベル」を把握するための指標だからです。
50通りの組み合わせをマッピングするのは、依然として面倒に思えるかもしれません。よって、それぞれの組み合わせを、冒頭で述べたような11のセグメントに分割して把握するのが賢い方法です。
このような図示をすることによって、各顧客にパーソナライズされた施策が合理的に実行できるのです。
RFM分析は「ユーザー行動」を定量化するためのシンプルかつ実践的な方法といえるでしょう。この発想を基本とし、それを拡張した分析手法も次々と誕生しています。その例としては以下の二つが挙げられます。
RFD分析:Dは「Duration」の略。ここではwebサイトにおける滞在時間など、ユーザーがサービスを利用する合計時間を示す。視聴や閲覧、回遊を目的とするサービスの場合に有用な手法。
RFE分析:Eは「Engagement」の略。はここでは、ページの滞在時間、回遊率、直帰率などの総計と考えて良いでしょう。オンラインサービスの利用者をセグメント化する場合に有用な分析です。
また、RFM分析の導入により、以下のような具体的な効果を見込めます。
・メール配信の効果を高める
メール配信サービスにRFM分析を通してセグメント化したユーザーリストを作成し、それぞれに異なる内容のキャンペーンメールを送付するアプローチが有効です。
そのリストをベースに、メールの開封率やクリック率、購入したサービス/商品に応じたセグメントをさらに行っていくことで、より高い効果が見込めます。
・新サービスのプロモーションに役立つ
ロイヤル顧客に対して、いち早く新サービスの告知を行うことで、拡散による初動売上の促進や、有用なフィードバックの獲得につながります。
新たな商品をまだ開発中のタイミングでも、彼らとコンタクトを取ることも可能なので、サービス改善のほか、プロモーション方法のブラッシュアップに寄与する意見を得ることができるかもしれません。
・顧客のロイヤリティを高める
ロイヤリティの高い顧客を増やしたい場合は、「Potential Loyalist」が最もターゲティングするべきセグメントでしょう。最初にサービスに触れたタイミングで、すでに良い印象を与えられている顧客だからです。
送るメッセージ次第では、またサービスを利用してくれるはずです。あるいは、企業やブランドのストーリーを語るようなコンテンツを送付することによって、ブランドそのものに対するエンゲージメントを高められる可能性があります。
・離脱を抑止する
「At Risk」 と 「Hibernating」 は離脱抑止という観点からすると、最も注意を払わなければならないセグメントです。
パーソナライズされたメールの送信など、顧客をサービスに再訪させる手段を全て尽くしましょう。
他のサービスを使うようになってしまう前に、セール情報などで再購入を促進するか、彼らがサービスを利用する阻害要因を取り除くようなメッセージを送信する必要があります。
・ROIを最大化する
ターゲティングを行わず、全顧客に同じ施策を実施するのはコスト面からもナンセンスでしょう。出来るだけ小さいセグメントにフォーカスすることが、コストを削減し、データを基に意思決定できる状態をもたらすのです。
RFM分析のルーツはダイレクトマーケティングです。商品のカタログを送付するコストを最小限にするために、アクションを起こしてくれそうな人にのみ送付するというアイデアがもとになっています。
オンラインマーケティングにおいても、この発想は同様に通用するでしょう。
・リマケ/リタゲ広告の効果を高める
Webサイトを一度訪問した人をターゲットにして、広告などのプロモーション施策を仕掛けるリマーケティング広告。
「Recent Customers」および「Promising Customers」のセグメントをFB広告や他のリマケ広告の配信対象として活用することで、わざわざオーディエンスを設計しなくても高い効果が見込めるようになるのです。
多くの企業では、顧客の属性データや会社データさえも持ち合わせていないということもよくあります。これらのデータを収集するためにコストがかかるからです。
RFM分析は、それほどたくさんのデータを取得しなくても、迅速にユーザーの行動を理解できる手法です。実際の購買履歴のデータに基づいているため、信用度の高い分析方法でもあります。
この手法は、特に小売事業者やECモデルのビジネスにおいて、マーケティング活動のROIを改善するために役立つことでしょう。 この記事は、APPAGENT社のブログ”CRACKING THE COMPLEXITY OF LIFETIME VALUE IN FREEMIUM GAMES“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。
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